福島第一原発事故による環境汚染


茨城・福島の放射能汚染測定調査

2011年5月末、フランスのCRIIRAD(クリラッド)放射能に関する独立測定調査委員会と測定器47プロジェクトに同行し、茨城県石岡市、日立市、北茨城市、福島県郡山市、福島市、飯舘村などの放射能汚染を測定調査した。
今回行った測定調査の結果は、詳細に核種などがわかる大きな機器を日本に持って来れなかったため、持ち帰ったサンプルをフランスで解析しています。
CRIIRADの第一回レポート 英語(分析値、評価は後日)PDF
(文:吉川真実、写真: クリスチャン・ポーズ ”No Nuke Bridge”



茨城
No Nuke Bridge
日本・南アフリカ・インド洋を守る脱原発レユニオン島の会主催:クリスチャン・ポーズ と
通訳として吉川真実が同行しました。
動機やいきさつなど「フランスでのチェルノブイリ原発事故の影響」

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測定調査団は、まず成田からところどころ大気中線量などを測りながら、石岡を目指す。
石岡で田んぼの土、畑の土をサンプリングし、「百姓暮らし」の思想家・スワラジ学園筧さんにお話を聞く。
第2の汚染県茨城では、細かな測定はされていない。

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▲ 右写真より
CRIIRADの研究部長ブルーノ・シャレイロンさんと茨城県北茨城市の鈴木さん。
鈴木さんは26年有機無農薬で作物を作ってきた「今まで汚さなかった土、東電の一発で汚された。」

北茨城のホウレンソウは3月18日、原発事故以来初めて出荷制限が出た品目。(福島は数値が出ていなかった)
今も汚染値は低いとは言えない。

クリラッドの測定員クリスチャン・クルボンさんが表土を測定。そして土を10cmほど掘って採取。核種がわかるガンマスペクトロメーターの数値は下がった。
表土を削ることで、再び汚染されていない野菜が作れるかもしれない。福島原発からこれ以上放射能漏れや爆発がないことが条件だが…。

シャレイロンさんと私。

ガンマドーズレイトモニター
10nanoSV - 500SVまで統計的に測定する。
右手にはガイガーカウンター。1mの高さで大気中線量を測る。


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『北茨城民報』 2011年5月29日号
鈴木さんの動画から「田植えから8日後、2回目の除草作業 」youtube
鈴木さんはこのインタビューの後 飯舘村のコンサートへ
すずき産地


今回、茨城北部で測定させてもらう農家を早急に見つけるべくコンタクトを取りはじめたが、大きな農家には断られた。


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茨城県北茨城市
海沿いの家のドアや窓がない。塀も崩れている。津波の痕。

木の下はいつも数値が高い。


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茨城県日立市、根本さんの農場。
遠くに水平線。津波は国道6号を超えて手前の田んぼ海側3枚くらいまで襲った。
ハウス内は200cps、入口露地は600cps。3倍違う。単位はcount per second
「安全な野菜を提供したいから事実を知りたい」お父さんから農場を受け継いだ根本さんは勇気がある。こんな農家の力になりたいと心に誓う。

エアフィルターは大気中線量と同じくらい。

デテクターガンマ。一秒間にガンマ線が当たる時のショックを数える。雨樋の下など水が溜まるところは1200cps。高い。

北茨城では津波被害のせいで宿が取れず、いわき湯本で宿を探す。湯本では観光客は受け入れておらず、被災者と復興作業員(被害の出た火力発電や倒れた電信柱の復旧など)のみがすべての宿泊可能なホテルや旅館に避難、宿泊している。調査団ということでやっと見つけた高級旅館は破格値だったが、最上階は被害がひどく、エレベータは止まり、薄暗い廊下には割れた大きな高級壺がひっそりおいてあった。 露天が自慢の風呂は内風呂の半分のみで、被災者の家族の方といっしょになった。従業員は自宅待機しており、女将はジーパンで食材集めにも苦労していた。


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福島県郡山市の堀屋さん。養護施設の人達と10年前から卵と野菜を作っている。
郡山市は福島市と並んで汚染量が高い。
3月15、16日、21日あたりの雨や雪による放射性物質の降下量がすべてを決定してしまった。
この畑では一日4時間以上仕事をしないほうがよい。(*)

(*) シャレイロンさんは大気中線量の許容値を年間1mSVとする。この数値だと100万人に50人ががんで死亡する、という。この因果関係は確率の問題だから、被曝量が上がれば死亡率も上がっていくことになる。これを低いと見るか高いと見るかの評価は区々である。

堀屋さんは、一ヶ月前からガイガーカウンターで大気中線量を測定している。県や国が言うことに疑問を持ち、事実を知り現実に立ち向かいたいという。
撮影エリック・ゲレさん。フランスのホームレスの女性、終わらない悪夢、放射性廃棄物はどこへ"核の悪夢" 放射性廃棄物(仏)"Greenpeace : operation Plutonium"、食品の毒性についてのルポなど社会的なテーマを撮る。

社会学者のティエリー・リボーさんが加わり、47プロジェクト2人と合わせて8人になった測定団。
Japon : echange travailleurs contre marchandises Thierry Ribault


郡山インター出口で測定する。


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福島駅前で、子供を持つお母さんたちの代表と待ち合わせる。
福島県福島市渡利地区は、汚染量の高いホットスポットだが、基準値には満たないため、行政から子供を守る何の処置も取られていない。例の基準値20mSVのせいだ。
子供たちを放射能から守る福島ネットワーク
facebook "Fukushima Network for Saving Children from Radiation"

小学校内、花壇を測定。木の下は相変わらず高い数値。水がはけないためか。

渡り廊下すぐ近くの雨樋の下、21000cps。

ブランコの下、土がえぐれて水が溜まりやすくなっている場所も汚染は高い。校庭の土は細かく、放射能を含んだ粉塵が舞い上がる。表土(0m)と1mの高さでの大気中線量を測らなければいけない。

校庭の真ん中は比較的数値が低い。文科省や行政は最初、各校この一カ所だけの測定値で評価していた。

(☆)コンンクリートやアスファルトは高圧ジェット噴射などの水で洗い流せば放射能は除染できるが、その水が流れるU字溝やタメマス付近で汚染が高くなる。土壌などにはへばりついているので表土を剥がすことで汚染度を低くする。
放射線はどのくらい浴びて大丈夫などという数値はない。
地面から来る放射線被曝、外や屋内で空気を吸引することで取り込む被曝、身体内部に取り込む食物や水に含まれる放射能からの被曝がある。
その人が、がんなどになりやすい体質かどうか、生活環境の中で、線量が高い道などを通っていないか?仕事場の線量は?そこに何時間いるのか?暫定基準値ぎりぎりの食物を毎日摂取していないか?子供なのか中学生なのか大人なのか?そして、福島原発から大量に放射性物質が放出された時、どのくらいの量を体内に取り込んで被曝してしまったか… などがすべての積量となる。

最良の防護方法は被曝要因から自分を遠ざけることである。福島市では大人はマスクをしていた。多感な時期の中高生はマスクをしない。国や自治体が国民の健康を守ってくれないことがわかった今、自ずから1マイクロSVだって被曝量を加算して良いはずがない。
そういう意味で、内部被ばくの程度を知ることができるホールボディカウンタで測ることは、これからの健康の上で大事なのだが「福島県民」は測定を拒否されるという状況にある。なぜなのか、これは犯罪といっても過言ではない。


福島市渡利地区の草むらで測定。


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牛の売却のめどが立たなかった畜産農家などおよそ2割が今も村に残っている飯舘村。(2011, 5)

6月末には村を出るという畜産農家の方。
47プロジェクトの岩田さん、ティエリー・リボーさん。
我々調査団が取材測定している間に、子牛の引き取り先が決まった。

本当に自分の畑が汚染されているのかどうか…
「数値を見て、あきらめがついた、ありがとう」と涙した飯館の農家の女性たち。


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2011-05-25 負げねど飯舘!! 村民のつどい Ustream
飯舘村から 酪農家をあなたの町に呼んでください 森住卓のフォトブログ


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5月29日『さよなら!放射能祭り』は、子供たちを放射能から守る福島ネットワークなどが中心となって福島市で開催された。

いくつかのブースでは、放射線から身を守る防護方法を教えてくれたり、健康相談、移住相談など行われた。CRIIRADと47プロジェクトは野菜測定のワークショップを開いた。
講演には立ち見の方もいて会場の温度が上がったが、窓を開けることは躊躇された。
汚染の高い所では、窓を開けるという取るに足らないことも容易にできない。生活自体がストレスになる。どうにもならないことなのだろうか…

取材を受ける子供たちを放射能から守る福島ネットワークの中手聖一さん。
スタッフの佐藤幸子さんの札幌講演会「福島のおかあさんお話を聞く会」Ustream
佐藤さんは6月中に「福島のお母さんの話を聞く」イベントを行うそうだ。とにかく話をする、話を聞く。大事なこと。
福島県民が震災直後からどのくらいの被曝をしているかを自分で思い起こして記入する「生活手帳」を作ったそうだ。晩発性の病気に対して県や国に賠償させるために。自分しか自分を守ることができない… 福島はそこまで切羽詰まっている。子供たちを福島から出さなければいけない。

ベクレルモニターを使って、測定を手伝う武藤類子さんとよしえさん。手前:辺見さん、菊池さん、油井さん、笹原さんがお手伝い

測定結果は、品目と場所を付した。梅以外は100Bq/Kg以下で高くはないが、ブラジル産の大豆を使った豆腐や他産地のものもあったため、これを参考にして”福島産のすべての食物が安心だ”と気を抜いてはいけない。
しかしながら消費者は食品を選ぶことができる。「がんばれ福島」の地産地消プロモーションは、被曝の閾値はないという理由で間違った道を選んでいると確信する。その間違った道を避けて、産地を確認し日頃の汚染数値をチェックするなど怠らなければ、消費者は食スタイルを変えれば良いだけだ。
フランスでは水のカルキが多いので、飲み水はボトルを買う人がほとんど。今までのようにはいかないのだ、と認識して食事のメニューや食品の種類を変える工夫をする時だと思う。

「風評被害」は測定しないために情報が足りない故に起こっている。遠くてもホットスポットがあるという現実がわかった以上、緻密に測定しなければ風評被害はなくならない。それを怠っているのは市や県や国、JAなのだ。


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ベクレルモニター。難しい技術がなくても簡単に測れる。

放射性物質は凸凹した表面に入り込む。木や土は洗ってもなかなか除染できない。

いつも1から説明してくれるシャレイロンさん。

よしえさんは、富岡町で震災に遭い、今は三春町に住んでいる。原発で働いたこともある。でも原発反対。
三春町は福島で唯一ヨウ素剤を配って町民に飲ませたところ。

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武藤類子さん(クリスチャン・ポーズと)三春町のすぐ隣の田村市で”きらら”というカフェをやっている。25年来の反原発運動家で、六ヶ所村で「原発いらない女たち」としてテントを張って非暴力の抗議をした。
ドングリを食べて静かに暮らそうと思っていた。それはもうできないかもしれない。
福島滞在中は調査団全員でここ”きらら”に世話になった。
武藤類子さんに関するページは後日アップします。

▲脱原発福島アクション、ハンカチパレード 2011.6.26 Youtube
▲20ミリシーベルト/年の撤回を求める文科省交渉 2011.5.23 Youtube

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▲ 私と夫クリスチャンは、福島を去ります。
今福島は「美しい地獄」と佐藤幸子さんが言っていたけれど、誰も住めないような場所が近くにあり、汚染は無くなるどころかセシウム137は300年経たなければ消えない。

今年から百姓をやろうと思っていた私たちは出鼻をくじかれる形となった。今私たちの居住する石岡市では、同志が集まってベクレルモニターを購入する予定です。消費者との信頼関係を培ってきた有機や無農薬生産者たちは、測定することで、この放射能汚染という現実を見つめる決心をしたのです。
私は「農家の土や野菜を測ることは、その人間を測ること」だと思う。その土や野菜が汚(さ)れてしまったのです。
”測る”ということは必ずしもデモクラシーではなく、差別を生むこともある。消費者だけが測れば、生産者との壁を作る。高汚染野菜がスーパーに並んでしまっては遅い。ましてや高汚染野菜が食卓に上がってはいけないのです。
生産者が測り、生産者が考える。解決策を一緒に考える。
汚されてしまった土に手や知恵を加えていかに汚れていない野菜を作るか、これから私たちは話し合い、勉強会をやり、できれば汚染値の高い茨城北部やホットスポット地区もしくは他県とネットワークで繋げ、共に考えながらこの問題に取り組んでいきます。(2011.6.9)


▼自主測定する農民の会(仮)発起人:筧次郎
原発について考える 筧次郎

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参考になれば…
東京大学大学院農学生命科学研究科 溝口研究室
農業農村工学会土壌物理部会緊急学習会「放射性物質の農地等における移動・循環問題 -食の安全と環境-」(2011.6.3) Ustream 資料pdf
「消費者の不安に農学者が答える」―大震災・原発事故・食の安全― Ustream, doc etc.


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「公定の測定値と資本主義」vs「私たちの生き方」  原発犯罪に関する縮小経済的評価
文:クリスチャン・ポーズ

放射能汚染に関する行政の測定値と生物学の測定調査はストレスの増幅器になっている…。フランスからの放射能測定独立調査委員会と47プロジェクトと共に茨城福島各地そして飯舘村での測定に同行し、そのショックとトラウマを感じました。

福島の村や街の子供の両親たちと同じく小規模農家は汚染という状況をなかなか受け入れられない、国やメディアの一般に出回っている放射能汚染に関する情報は錯綜しているか操作されているし、個人的にターゲットを絞って線量を示してもなかなか受け入れることができないのです。

農家は常に、駆け引きや心理的な観点で、社会的な責任ある提示ということでなければ、測るということは権力の刃であり、その機械や技術が植民的なもう1つの局面を持ち合わせてしまうということを覚えておかなければなりません。ここではベクレルモニターLB200 がそれです。

汚染線量測定と原発事故はセットとなり、今日では銀行、株式、保険会社や投資会社という投機家による金融商品として資本化されています。
この投機家たちは、市場のためには、大銀行らが消滅してもいいと思っている農村の生活を平成の大合併のような地理的に改編させながら、大きな利潤を約束します。それは、建設であったり道路、鉄道、空路や海路による輸送そして関税撤廃、新しいテクノロジーや食品や産業製品の輸入だったりします。

こうして、資本主義のコンテクストの中で、公共もしくは民間の判定でも放射能の汚染を測定するということは、私たちを貧しくしていくのです。

土、野菜、水、牛乳、種を、原発危機や放射能汚染が生む資本主義のコンテクストの中で公共もしくは民間の基準で測るということは、別な形で原発(原子力)に加担し、東電や他の電力会社の権力をさらに強化することを意味します。
これは人間にもっとストレスや苦悩を与えグループや組織を分裂させることにもなります。

農村の思想無しに、測定市場ビジネス、金融商品や保険という無秩序の資本主義下で、国や市に放射能測定を任せておくことは、マスや都市型の経済体系へ完全に取り込まれることになり、農民排除へと変遷するそしてそれが長期化するようなことを生むことになるでしょう。

資本主義外で自分たちのやり方で放射能を測るということは不可欠です。それは新しいアクションの場を作ることになりますし、なによりも手段の共有化、人間関係や一つになること、政治的、思想的、詩的、芸術的、精神的に原子力産業と闘うことを意識し自覚するためにです。
この非暴力の反文化の目的は、日本の脱原発への意思決定(宣言)のために社会環境の条件を整え政治的ダイナミズムを与えることです。
六ヶ所村や福島で昔からそして今も田村市で反原発を叫んでいる武藤類子さんが呼ぶところの「それが私たちの生き方」、それを救うことなのです。
(2011.6.21)


〈linked222 日本語ページ〉
   茨城・福島の放射能汚染測定調査 <日本語>
   フランスでのチェルノブイリ原発事故の影響 <日本語>
   フランスの携帯電話用アンテナ基地局周辺の健康被害と状況 <日本語>
   『幻のダムものがたり』緒川ダム反対住民運動 インタビュー <日本語>
   生きるところ、生きる人 <日本語> 縮小経済 & ハーフビルド & DIYの話

“日本の非暴力の政治的市民運動と自由”、"八ツ場ダム反対"、“平成の大合併”に関するインタビューなど、フランス語のページ。
    [ 6 ]    "Ce que chacun peut réellement faire ou être", ou évaluer la justice dans un contexte de décroissance, "YAMBA, le plus lourd fardeau des contribuables de l'histoire des barrages du Japon"
    [ 1 ]    Japon : Reforme, Grande Fusion de Heisei, Dissolution
    [ 2 ]    LIBERTES et ACTIONS CIVILES ET POLITIQUES NON VIOLENTES AU JAPON, Tableau national et Carte Regionale d'Ibaraki de la Grande Fusion de Heisei
    [ 3 ]    "DES BRIOCHES, DES EAUX ET DES CHOUX", Kusatsu et Tsumagoi
    [ 4 ]    "La Grande Fusion de Heisei s'oppose au futur du Japon !",  Hiroshi Itoh, maire de la ville de Kutchan, Hokkaido

    原発について考える 筧次郎 (日本語) 2011.6.18


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