縮小経済 & ハーフビルド & DIYの話 文・その他 ポーよし川真実            


田舎探し、ハーフビルド

     我々はどこへ行くのか?
     自然に・自然を・自然と
     家をみつける。 タイミング、
                フィーリング & チャンス
     国ノ色、故郷の 色



田舎探し、ハーフビルド

    ここでいいと思 えばここでいいのだ
   吾唯足ルヲ知ラ ナイのだから
    アドベンチャー  ハーフビルド
    実は家づくりは 楽しくない
   建築確認という門出
   基礎工事、もう 後戻りできない
   山に響く音




    汚水処理装置


吾唯足ルヲ知ラナイのだから







”資産を持たない主義”の夫は、無駄や贅沢、ちょっとでもお金のかかることにとにかく反対する。土地を賃借して、もしくは買って、場所さえ見つかれば小さな小屋でも建てれば住めるじゃない?と言うと、複雑な表情をした。
初夏のある日、電話番号を渡してあった女性から連絡が入り、彼女の知っている地主さんの山に、土地があるかもしれない、ということで、早速現地の山林に向かった。集落から少し離れている、ほとんど誰も通らない山林を抜けて、沢をまたいで奥へ進むと、自然林が続いた。どうやらもっとずうっと奥へ登って行けば、標高500m級の後ろの山の頂上まで行けそうな道だ。道は悪いが手を入れれば普通の車も入れそうだ。途中、馬に乗った隣人とすれ違った。兼ねてから、馬の近くに住む予感がしていたので、我が目を疑った。こんなところに馬がいる!
10分程歩いて「だいたいこんな感じです」という案内の女性に、こちらの満足度を伝えて、日を改めてまた来ることを告げた。具体的に土地を見たわけでもないのに、私の心のなかでは「ここに住む」とすでに決めていた。土地が呼んでいるようだった。

少々頭を冷やす”振り”をして何日か明けて、別の日に山を散歩することにした。まだ具体的には何も見つけていないのだから、善は急げなのだから。
再び山に入ると、先日見逃した絶対行きたい場所があった。覆い茂った木の向こうに少し陽が射し込んでいるような開けている土地があったのだが、案内の女性が「こっちではないなぁ」と言ったので気を使って通り過ごした。「そこへ行かねば」と涌きあがった気持ちを夫に伝えると、彼も同じくその場所が気になっていたらしく、二人で勇んで進んだ。 土地は、聞いたところによると、昔きのこを栽培していたところで、大きな木は何年か前に切ってしまって、今は4〜5mくらいの中くらいの木に育っているが、なにせ放ったらかしで篠竹が2mの高さに生茂って、土地の形や高低を隠してしまっていてまるでわからない。持っていた一刀のカマでなんとなく道だと思われるところを切り開いた。私は臆病な質なので、一歩一歩進むのが恐かった。何が出てくるんだろう、何が見えるのだろう。わかったのは、平らな場所がほぼ無く、奥へ下へと斜面になっているということだった。
行けるところまで篠竹を掻き分けそれ以上の進入をあきらめた。あんなに反対してたのに「草刈り機を買おう」と夫が言った。「やっと…」とその承諾にほっとし、翌日ホームセンターで購入した。一言地主に断りを入れて、その夏中、猛々と茂った篠竹をバッサバッサと草刈り機とカマで倒した。

地目が山林の、集落から離れたその土地は、とても気に入った。近くを通る沢の水はそのままでは飲めないし、進入路に埋まっている湧き水の管は、下の家が五軒程使用していて余分な量はないから、使わせてもらえないということなので、どこかから水を確保しなければならない。結局50mほど離れた沢の近くに仮掘りしよう、ということになって、ボーリングをやる人に頼んだ。8月の一番暑いときであった。 私は、スケジュールやらオーガナイスやら、予算のことやら、何から考えて良いのかわからなかったが、色々な人の意見を聞いて教えてもらって進めて行こうと、少々他人頼りにしていた。

先日訪問した、ビニールハウスに住んでいた家族の話は、私に大きな影響を与えた。自分はあんなふうに暮らせるのか、暮らしたいのか… 私は彼らほどワイルドではないし、人間がへなちょこだ。ボロ屋でもタダで提供してくれるようなラッキーチャンスに巡り会う強運も持っていない。そもそもアドベンチャーが好きではない。フランス語で言うアヴァンチュール。アヴァンチュールと聞くと、甘く危険な情事を連想するが、アヴァンチュレという動詞は危険にさらすということで、アヴァンチュリエという冒険家・チャレンジ精神が好きではない。日常生きていて目を閉じただけでも危険を感じることはないだろうか。裏山を独りで歩いただけで人生の不安を感じる事はないだろうか…。ペシミストと言うなかれ。然るに物事の達成感はその道が険しければ険しいほど倍増するだろう。その満足が次のチャレンジへ、もしくは達成に至らぬ遺憾や未練が次のステップへと人間を昇華させる… そうかもしれない。私にはそのような部類の野心は無い。越っすべきものは他者ではない、私が生きる自然環境であり自己である。そのように今まで他者との交渉や比較・対決やコミュニケーションでさえ避けてきたのだから。それに、勇気を試すような勇気もない。
日本へ帰国してきた意地のようなものはあったのかもしれない。穏やかな生活を得るために歯を食いしばる、安穏な老後や余生のために身を粉にして働く、のは矛盾しているが、”適切なやり方”そんなものが分かっていれば探求などしない。わからないからもがかざるを得ない。家を探す、家を建てる苦悩なんて贅沢な病なのだ。吾唯足ルヲ知ラナイのだから。

どのような方法で住処を得ようと、とにかく余計にお金を使わずに、出来ることは自力でやりたい。しかしどのくらい自分たちに技量や体力があるのか検討がつかない。私は少々起用だと自負しているが体力がない。夫は突然右回しと左回しを間違えてモノを壊すことができるくらい、フランスでいうところの「神の手」(頭は回るが手の不器用さに関しては幼稚園児以下で、神は二物を与えず、とでも言おうか)をもっている。コンピュータもさっぱりで私如きが教えるくらいなのだ。 結局そんな不安もあって、全くのセルフビルドという選択はしなかった。もちろん○○ホームや○○ハウスという工務店経由は論外で、工務店という役割はこの当時まだよくわかっていなかったが「手数料だの仲介料だのをたくさん取られる」から候補にはなかった。結局はなんとなく自分たちが作り、管理し、人件費を搾れるだろうハーフビルドという程度加減も曖昧な方法だけれども、それぞれの職人たちに提案してみようということになった。 それらを理解してくれる人だけでこの仕事が完了するのは理想だけれど、いったいどこに最低限の利益しか求めず親切で仕事丁寧なプロがいるのだろうか。
「時間はかかるだろうけど、こうやって生きていくチョイスをしたんだから」夢追う青年のようであるが尤もな夫の言葉に私は大きくうなずき不安を飲み込んだ。


地主の広大な土地にはすでに3組の人たちが賃借契約を交わしていて、契約書を作ったりアドバイスをくれたりする役の人を紹介された。お金の話もその人とするように、と、 縁のある話は、まるでレールが引かれているようにトントン拍子に進む。夫もこの土地が気に入り、9月に入り、本格的に賃借契約をしたい意思を示す。

その仲介人は、とても不可解だった。地代の交渉は困難なポイントはひとつもないと思われるが、返事をもらうのに時間がかかった。

返事の連絡が無いとネガティブに捉え独りで悩む私は、1週間、2週間「なにかいけない事を言ってしまっただろうか」「催促の電話をするべきだろうか」はたまた「これは縁がないという予兆なのだろうか」と悶々とした。そんなやり取りが2ヶ月程続いた。 話が円滑に進まない=止めた方がよい 運がない、縁がない、と内心解釈していたペシミストな私の自信はちっちゃなちっちゃな石ころのようになり下がって、判断が出来なくなっていたので、たくさんの人に土地を見てもらって「ここでいいのだ」という確信要素を得ようと必死になっていた。

夫は努めて、フランスでいうところの”悪魔の弁護士”「故意に仲間や弁護をする当事者に厳しい質問をして正しい答えを導き出そうとする弁護士」の役目を買って出て、うるさすぎる細かい細かい質問を私に浴びせた。これは彼の本意を理解していてもなかなか許容できるものではなく、結果毎週のように口喧嘩となった。
夫「地質調査をなぜしないの?」
私「AさんもBさんも専門家のCさんも、ここは崩れるところじゃないって言っているから。」
夫「君はその答えのどこに確信があるの?」
私「土地の人は土地の歴史を知っているし、経験で大丈夫だと言っているんだし、お金と手間もかかるし、専門家のCさんが大丈夫って言っているのに、信じられないから測ってくださいって言ったら失礼でしょう。」
きちんと調査して数字にして自分の土地を知る事、皆が言っているからというのは何の当てにもならない事… などなどのもっともな説明は説得力があり、結局手間と金をかける事にした。

 



最初はカマのみで篠竹の垣根を切り開いていった。
ほんとにしのだけだらけ。




篠竹を刈ると、コナラの林が続いていた。




ほっぽらかしの進入路は四輪駆動でなければ登れない状態。





自然の中での暮しの必需道具、チェーンソー、草刈り機。少々高くてもプロ仕様のものを買った方が仕事が楽だし、長持ちする… と実感している。

外国人の仕事っぷりを見ていると、なぜ外国製の機械や道具が頑丈にできているかわかる。道具の扱いが雑な人が多く、底力が半端ない。
チェーンソーも草刈り機も何度も修理に出している。
インパクトドライバーは二台目を購入した。最初からしっかりした作りのものにすれば良かった… お金はもちろんの事、バッテリーのチャージがいい加減で、時間をかなりロスしてしまった。


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 〈7〉アドベンチャー ハーフビルド