建築確認という門出
ネットで調べて、必要書類と思われる平面・立面・断面・周辺図・求積図・地主の土地権利書を用意して県の建築指導課へ行く。
噂に聞いていた姉歯の構造計算書偽装問題後改正になり、建築確認審査の厳格化が施行され始めたばかりで、義務ではないが、無料の事前審査というものがあった。
これは申請者が何回も手続きを1からやり直し、申請料を再度払うことを避けるためのサービスでもある。図書の差し替えや大きな変更は認められないが、軽易な場合(誤記または記載漏れ)はカウンター横のスペースでホワイトや糊やカッターも貸してもらえて、その場で提出できる。
「50平方メートル未満の建築物には建築確認はいらないのであれば、49平方メートル以下+49平方メートル以下の二棟を建てて渡り廊下で結ぶことも可能ですよね?」と言うと、担当者は「ま、もうちょっと複雑ですけど」と役人らしく笑った。※
建築確認を受けることで、複数の眼にさらされることで一応安全な建物ができるような気がしたし、そうしなければ「わたし如き」が「きちんとしたもの」を建築できるわけがないと思っていたので、この難関突破は必須条件…と腹をくくった。
チェックが厳しくなったということは聞かされていたが、以前の事項を知らないし、どちらにしても言われた通りにやるしかない。私が作成した図面を見ながら、担当の人は足りない記述や書類、図面を丁寧に教えてくれる。
「ここまでできていれば、もうちょとですョ。」
この言葉がなければ、ここで諦めて建築士に依頼していたと思う。
付近見取図、配置図、矩計図、壁量計算、耐震耐風計算、壁の配置バランス、基礎部分図面、基礎伏図、土台大伏図、床伏図、小屋伏図が必要だという。壁量l計算から後ろは、建築士免許証がないために発生する提出義務書類なのだ。ショックと驚きを隠さないこのド素人に、担当の人は「耐震耐風計算、簡単ですから一緒にやってみましょう」と言った。確かに、知っていれば難しい計算ではない。かれこれ1時間くらい文字通り”指導”してもらった。
そして、知り合いの建築士に少々アドバイスを受けながら、どうにかこうにか書類はできた。
一部、基礎・床・小屋伏図は大工にお願いする。これが初めての家本体造りに係る大きな出費となる。後で考えれば、自分でできただろう伏図は、この時点ではアップアップで「伏図のいろは」を1から勉強している余裕はなかった。こういう時に限って同級生の建築科の友達と連絡が取れない。運命を感じる。
指導課に寄ったのが3月。4月過ぎに書類の最後のチェックに訪れた時、新しい担当の人になっていた。このオフィスで最後の仕事の1つだったので親切丁寧に接してくれたのだろうか。お礼は言えなかったが、その担当者のお陰で事は速やかに進行していったのだ。
「自らの責任において、指針に適合するよう作成の上…」とあるから、この日本特有の「自らの責任」でベストを尽くし、幸い、一カ所記載漏れを建築指導課のお客様用スペースで修正し、提出した。
矩計図を一番最後に作成するという、プロが見れば校正で赤だらけになるだろう各書類で、とりあえず許可は降りた。GOサインが出てしまったのだ。